厚生労働省によれば、日本人の2人に1人が喘息・アトピー性皮膚炎・花粉症・アレルギー性鼻炎等何かしらのアレルギー疾患に苦しんでおり、その数は年々増加の傾向にあります。
参照厚生労働省「アレルギー疾患の現状等」
このように、私達、日本人にとってごく身近なアレルギー疾患ですが、実は、DHA・EPAにはこのアレルギー疾患を予防・改善する働きがあることをご存知でしたでしょうか?
そこで、DHA・EPAのアレルギー疾患を予防・改善する働きについて詳しく解説していきます。まずアレルギー疾患とはいったいどんな病気であるのかをみていくことにしましょう。
目次
アレルギー疾患とは?
私達の体は、ウイルス・細菌・化学物質等異物に対して、自己を防衛するために、これを排除する免疫反応をおこします。
しかし、ときにこの免疫反応が自己を傷つけてしまう場合があります。これがアレルギー反応と呼ばれるものです。
そして、このようなアレルギー反応による疾患をアレルギー疾患といい、次のような病気があります。
- 気管支喘息
- アレルギー性鼻炎
- アトピー性皮膚炎
- アレルギー性結膜炎等のアレルギー性結膜疾患
- 花粉症
- 食物アレルギー
- 薬物アレルギー
参照日本アレルギー学会「アレルギーを知ろう」
アレルギー疾患が増加する原因
厚生労働省によれば、これらのアレルギー疾患は年々、増加の傾向にあります。なぜこれらのアレルギー疾患は年々、増加の傾向にあるのでしょうか?
その原因としては次の4つが考えられています。
- 子供があまりに衛生的な環境で育ってしまうために免疫機能の発達が不十分になってしまっていること(これを衛生仮説といいます)
- ハウスダスト・ペット・スギ花粉・ダニの死骸等のアレルゲンの増加
- 大気汚染・ストレス等の増悪因子の増加
- 食生活の乱れ
では、続けて、このうちの食生活の乱れについて、DHA・EPAという観点から、詳しく見ていくことにしましょう。
オメガ3とオメガ6のバランスの乱れがアレルギー疾患を増やしている?
現代社会においては、外食の増加・ジャンクフードやインスタント食品の蔓延等の理由から、DHA・EPA等オメガ3の摂取が不足しています。
それに伴い、リノール酸等オメガ6が過剰に摂取されており、両者のバランスが崩れている結果、私達は炎症体質になってしまっている、といわれています。
ここで重要なことは、アレルギーに関わる要因がエイコサノイドと考えられている点です。
エイコサノイドとは私達の生体機能を微調整する役割を持った局所ホルモンの一種で、オメガ3を原料とする善玉エイコサノイドと、オメガ6を原料とする悪玉エイコサノイドの2種類があり、それぞれ次のような働きをしています。
善玉エイコサノイド
- 炎症の抑制
- 血小板の凝集の抑制
- 血管の拡張
悪玉エイコサノイド
- 炎症の促進
- 血小板の凝集の促進
- 血管の収縮
オメガ3とオメガ6の理想のバランス比
オメガ3とオメガ6の理想の比率は1:4といわれていますが、現代社会においては、前述のように、この比率は崩れ、1:10になっているとも、1:40になっているともいわれています。
それゆえ、それらを原料とする善玉エイコサノイドと悪玉エイコサノイドのバランスも崩れ、悪玉エイコサノイドが過剰に優位になっている結果、私達は炎症体質になってしまっています。
そのために、アレルギー反応が過剰になりがちで、アレルギー疾患の増加につながってしまっているというわけです。
実際に、オメガ3を積極的に摂取して、オメガ6とのバランスを図ることで、アレルギー疾患の改善につながるとする実験結果がありますので、続けて、ご紹介したいと思います。
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健康にオメガ3系脂肪酸とオメガ6系脂肪酸のバランスが大切な理由
リノール酸等に代表されるオメガ6系脂肪酸の過剰摂取が問題になっている事をご存知でしょうか? オメガ6系脂肪酸というと一般に何か健康によさそうなイメージがありますが、実は過剰に摂取しすぎると、DHA・E ...
順天堂大学医学部、清水敏明教授による実験
これは、順天堂大学医学部、清水敏明教授によるマウスを使った実験になります。
実験の内容は、マウスにovalbumin(タンパク質の一種で、食物アレルギーを引き起こす物質)を投与してその後を観測。
ovalbumin投与後、マウスに対し、大豆、エゴマ(オメガ3)、ラード(飽和脂肪酸)、コーン(オメガ6)、コーン油(オメガ6、低脂肪)から摂った飼料を5グループに分けて与えました。
5つのグループ分けは下記の図にて解説
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それぞれ飼育する5つのグループを経過観察したところ、次のような興味深いことがわかりました。
脂肪分をエゴマ(オメガ3)からとった飼料で飼育されたマウスの腸におけるアレルギー反応は、脂肪分をその他からとった飼料で飼育したマウスに比較して、有意に抑制されました。
この結果から教授は、オメガ3とオメガ6のバランスが改善されたことによるものと考えられると述べています。
参照順天堂大学医学部小児科「n-3系多価不飽和脂肪酸の小児における有用性」
まとめ
今回は、オメガ3に分類される、DHA・EPAとアレルギー疾患の関係について詳しくみてきました。
DHA・EPA(オメガ3)にはアレルギー疾患を予防・改善するすばらしい働きがあることがよくおわかりいただけたかと思います。
アレルギー疾患に悩まされている方は、是非、食事等からDHA・EPAを積極的に摂っていただけたらと思います。
ただ、そうは言っても、仕事・育児・家事等で忙しく、なかなか食事からDHA・EPAを摂ることは難しいかもしれません。
そのような場合には、DHA・EPAの場合、サプリでも、天然由来の成分が使われていて、食事から摂った場合と効果は全く変わりませんので、サプリを上手に活用していただければと思います。