DHA・EPAが生活習慣病の予防・改善に効果的なことはよく知られていますが、実は、DHA・EPAはアトピーの予防・改善にも効果的なことをみなさんはご存知でしたでしょうか?
そこで、今回は、このDHA・EPAのアトピーを予防・改善する働きについて詳しくお話していきたいと思います。では、さっそくアトピーがどんな病気なのかからみていくことにしましょう。
目次
アトピー性皮膚炎とは?その現状・原因・症状等
厚生労働省の調査によると、現在、アトピーの有病率は、次のようになっており、年々、増加の傾向にあります。
年齢 | アトピー有病率 |
4か月児 | 12.8% |
1歳半児 | 9.8% |
3歳児 | 13.2% |
小学1年生 | 11.8% |
小学6年生 | 10.6% |
大学生 | 8.2% |
20代から30代まで | 9%程度 |
参考厚生労働省「アレルギー疾患の現状等」
実に、乳幼児から30代までの日本人のおおよそ10人に1人がアトピーに苦しんでいることになります。
このように私達にとって実に身近なアトピーですが、では、なぜ私達はアトピーになってしまうのでしょうか?
アトピーの原因についてはアトピー素因にさまざまな環境要因がくわわって発症すると考えられています。
アトピーの素因と環境要因
では、まずアトピー素因から説明していくことにしましょう。アトピー素因とは次の2つを言います。
- 気管支喘息・アレルギー性鼻炎・結膜炎・アトピー性皮膚炎等に自分または家族が罹患したことがある
- IgE抗体を産出しやすい体質である
また、環境要因には次のようなものがあります。
- ダニ・ほこり
- 気候
- 食事
- ストレス
- 細菌・真菌
- ペット
- 大気汚染
- 室内環境
アトピー素因にこのような環境要因がくわわって、アトピーを発症すると皮膚が乾燥し、皮膚のバリア機能が衰え、さまざまなアレルゲンが皮膚の内部に入ってきます。
そして、このアレルゲンによって、アレルギー性炎症が引き起こされ、次のようなアトピーの辛い症状があらわれてきます。
アトピーの症状
- 膿疱(膿の水ぶくれ)
- 小水疱(小さな水ぶくれ)
- 丘疹(ぶつぶつ)
- 紅斑(赤み)
- 湿潤(じくじく)
- かさぶた
- ぽろぽろとした皮膚のはがれ
- 苔癬化(ごつごつ)
参考厚生労働省「第2章アトピー性皮膚炎」
このように、一度、発症してしまうと、慢性的にこのような辛い症状に悩まされてしまうアトピーですが、DHA・EPAにはこのアトピーを予防・改善するすばらしい働きがあります。
では、なぜDHA・EPAにはアトピーを予防・改善する働きがあるのでしょうか?続けて、その理由をみていくことにしましょう。
DHA・EPAがアトピーの予防・改善に効果的な理由
乾燥し、バリア機能が衰えた皮膚の角質層から、アレルゲンが皮膚の内部に入ってくると、皮膚の内部で次のような反応がおきます。
- 皮膚内部へのアレルゲンの侵入
- 免疫細胞が、このアレルゲンを異物と認識し、IgE抗体を産出
- このIgE抗体が肥満細胞の表面に接着
- 再び、侵入してきたアレルゲンがこの肥満細胞の表面に接着したIgE抗体と反応
- 肥満細胞がヒスタミン・ロイコトリエン・プロスタグランジン等のアレルギー反応を引き起こす化学物質を放出
このアレルギー反応を引き起こす化学物質によって、アレルギー性炎症反応が引き起こされ、さまざまな辛いアトピーの症状があらわれてくるといわけです。
そして、このアレルギー性炎症反応に深く関係しているのがエイコサノイドで次の2種類があります。
- 善玉エイコサノイド オメガ3系脂肪酸を原料にしてつくられる
- 悪玉エイコサノイド オメガ6系脂肪酸を原料にしてつくられる
そして、それぞれ次のような働きをしています。
①善玉エイコサノイド
- 炎症の抑制
- 血小板の凝集の抑制
- 血管の拡張
②悪玉エイコサノイド
- 炎症の促進
- 血小板の凝集の促進
- 血管の収縮
問題は、この2種類のエイコサノイドのバランスが崩れ、悪玉エイコサノイドが優位になっていると、炎症が必要以上に促進されてしまい、過剰なアレルギー反応が引き起こされてしまうということです。
そして、現代社会においては、オメガ6の摂りすぎによって、両者のバランスが崩れ、悪玉エイコサノイドが優位になっており、これが近年アトピーが増え続けている原因の1つだと考えられています。
DHA・EPAには、オメガ3として、善玉エイコサノイドを増やし、悪玉エイコサノイドとのバランスを回復させて、炎症を抑制し、過剰なアレルギー反応を抑える働きがあります。
これがDHA・EPAがアトピーの予防・改善に効果的な理由です。
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徳島大学でおこなわれた実験
DHA・EPAがアトピーの改善に効果的なことを確認した実験結果がありますのでご紹介したいと思います。
これは徳島大学大学院医歯薬学研究部の安友教授と小児科医の渡辺先生の共同研究におけるマウスを使った実験になります。
研究チームは、アトピー性皮膚炎のマウスを、タクロリムス軟膏のみの群とタクロリムス軟膏にDHA・EPAを併用する群の2つにわけて治療し、その経過を観察しました。
すると、その結果、タクロリムス軟膏にDHA・EPAを併用した群は、タクロリムス軟膏のみの群にくらべて、アトピー性皮膚炎の皮膚症状が有意に改善されることが確認されました。
これは悪玉エイコサノイドの1種であるロイコトリエンB4の働きが、DHA・EPAによって抑制された結果だと考えられています。
そして、安友教授らは、DHA・EPAがアトピー性皮膚炎治療の補助剤として活用できる可能性が明らかになったと述べられています。
まとめ
DHA・EPAはアトピーの予防・改善にすばらしい働きをしてくれます。是非、食事等から積極的に摂っていただけたらと思います。
ただ、仕事・育児・家事等で忙しくなかなか食事等から摂るのが難しい場合もあるかもしれません。
そのような場合には、DHA・EPAの場合は、サプリでも、天然由来の成分が配合されており、食事から摂った場合と効果に違いはありません。
上手にサプリを活用することで、積極的にDHA・EPAを取り入れていただけたらと思います。