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食欲は、脳の摂食中枢と満腹中枢でコントロールされています
人にはこれを食べたい!という欲求を引き起こす摂食中枢、つまり空腹中枢と、お腹がいっぱい!と感じる満腹中枢があります。
いずれも脳の視床下部という所にあり、実に色々なホルモンや神経伝達物質の刺激を受けながら、食欲を調整しています。人間の体の機能のほとんどはホルモンで調節されます。
肥満を解消するホルモンもあるのをご存知でしょうか?やせるという意味を持つ言葉から名前がついたレプチンというホルモンは脂肪細胞から分泌され、体全身の体脂肪の量がどれくらいかを脳に伝えて、食欲と代謝を調整します。
レプチン抵抗性とは
脂肪細胞に体脂肪が増え過ぎると分泌量が増え、脳は食べ過ぎを抑えてさらに代謝を上げて、体脂肪を減らそうとします。
残念ながら、肥満の人では脂肪細胞の脂肪量が多く、レプチンが多く出されすぎて慢性化し、かえってあまり効果がなくなるのです。
レプチンは脂肪細胞の数が多いほど多く分泌されますが、一度に大量のレプチンが脳に送られるとレプチン受容体の働きが悪くなり、食欲を抑えることができなくなります。肥満の人ほど食欲を抑えられないのはそのためなのです。
食欲を抑制できずに太りやすくなるというこの悪い循環をレプチン抵抗性と言うのです。
食欲を増進するグレリンと、抑制するレプチン
食欲は様々な環境によって刺激を受けます。胃を刺激したときに分泌されるのが、ペプチドホルモンのグレリンという物質です。このグレリンが分泌されると、迷走神経という所を通って、食欲中枢を刺激して食欲を増進します。
一方、食欲を抑えるのがレプチンです。食事をすると、血糖値が上昇して脂肪細胞が刺激され、レプチンが分泌されます。レプチンは血中を通って満腹中枢にあるレプチン受容体に作用し、食欲を抑制します。このレプチンの受容体の動きをよくすることが重要で、規則正しい生活をしたり睡眠をしっかりとったりするのが効果的です。
よく噛むことが肥満予防になる理由
レプチンは交感神経にも作用します。脂肪の蓄積を抑えて、エネルギー消費を促す機能もあります。
満腹中枢を刺激するこのレプチンは、食べ始めてから約15-20分経ってから脂肪細胞から分泌されるため、早食いやドカ食いは食べ過ぎの原因になるのです。
肥満を予防するためには、食べ物をよくかんでゆっくり食べ、満腹中枢が動き始めるのを待つのが大切です。よく噛むということは誤嚥を防ぐだけでなく、レプチンを分泌させるのに大事な行為なのです。
睡眠で影響をうけるレプチンとグリシン
レプチンは、睡眠時間が短いと分泌量が下がってしまいます。睡眠不足だと体脂肪が増えても、食欲を抑えて、代謝を上げさせるレプチンの大事な信号の効果がなくなります。
睡眠不足で減るのがレプチンで、逆に睡眠が足りないと増えるホルモンが空腹時に分泌されるグレリンです。食欲を増進させ、体内のエネルギーを蓄積させ、結果、体脂肪を溜め込むホルモンです。
先ほどの食欲を増進させ、成長ホルモンの分泌を促進するレプチンとは拮抗的な関係で、バランスを取りながら食欲を調整しているのです。寝る子は育つというのは睡眠中に成長ホルモンであるこのレプチンが円滑に分泌されるからです。
例えば4時間睡眠と10時間睡眠を比較した場合、4時間睡眠の場合はグレリンの血中濃度が約30%程度も増えるという報告があります。睡眠時間が短いと、1日の起きている活動時間が長くなりますから、その起きている時を動かす分のカロリーと栄養素を摂り入れないといけません。
睡眠が足りなくなるとグレリンが増えて、食欲が増します。つまり、起きている時にたとえ必要十分なカロリーを摂っていても、グレリンのせいで過食をしてしまい、余分なカロリーが体脂肪として蓄えられてしまい、肥満となってしまうのです。
運動直後に食欲が減退する理由
食事の前に運動をすると肝臓に蓄えられていたグリコーゲンという物質がエネルギーとして使われ、一時的に血糖値が上がります。血糖値は食事をしても上がるので、体は食事をした時と同様の反応で食欲が低下します。
さらに、運動すると食欲を刺激するグレリンの分泌が減り、たとえ空腹でもお腹が空いたと感じなくなります。
グレリンは、運動強度が高ければ高いほどますます低下して食欲が減り、この状態が運動をした後約1時間くらい続きます。お腹が空いたら軽度の運動をすると食欲を抑制できて余分なエネルギーを燃焼することができるため、肥満予防に効果的です。
最後に
ホルモンのレプチンとグレリンの関係がわかった上で、これからの食生活や睡眠を見直してみましょう。
よく噛むことやよく寝ること、そしてよく運動することがどれだけ食欲に影響があるか、そのメカニズムがわかった上で肥満予防生活をおくると、面倒さや苦痛が少しは和らぐはずです。